2008年9月10日~14日スイス
チューリッヒには作曲家リヒャルト・ワーグナーも一時期居を構えていたらしく、その豪邸は現在市役所になっていた。学会の会期が、運よく週末とくっついていたため、スイス滞在を延長してベルンとルツェルンを観光した。アインシュタインが、学校での成績が悪かったというのは良くある後世のつくり話だったらしく、ベルン市にあるアインシュタイン博物館で展示されていた成績表の説明をしてくれた管理人さんによれば、普通にいい成績だったそうだ。但しいわゆるパーフェクトな成績表ではなかった。東大生でも、どの教科や習い事も驚異的にできる万能タイプと、一芸に秀でているタイプがいた。もっとも、一芸に秀でているといっても、他のこともそれなりにはできるわけである。アインシュタインは学校の生徒としては、後者タイプだったのかもしれない。
ルツェルンはメルヘンな街並みに、たくさんの白鳥が漂っている川に趣のある橋がかかっていて、私がこれまで訪れた街の中で最も気に入った街の一つになった。ルツェルンにもワーグナーの旧邸宅があり、そこには私が最も影響を受けた人物の一人であるフランツ・リストに関わる展示物が多く残されていた。次はルツェルン音楽祭の時期に滞在したいものだ。
ドイツやスイスのドイツ語圏を旅していると、ナチスの宣伝に利用されたとはいえ、ワーグナーのドイツ文化圏に与えた影響が非常に大きかったことを感じることがある。一方で、アインシュタインはユダヤ人であり、後年米国に渡ったという事情もあるが、その全人類に与えた影響の大きさに比べ、その足跡は殆ど残っていない。一般社会と科学者との距離が遠いからなのか。ワーグナーの音楽を聴いて感動する一般市民は大勢いるが、アインシュタインの論文を読んで感動する人は、少なくとも私は出会ったことがない。
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